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入浴の専門家に聞く、 更年期症状と 入浴の関係性とは?

話し手
早坂 信哉 先生

聞

聞き手
cocoloni 編集部

 本日は、普段の占いコンテンツとは異なり、「温活」「入浴」に関連した記事を読者のみなさまにお届けいたします。

 今回インタビューさせていただいたのは、25年以上にわたり、7万人以上の入浴に関する調査を医学的に行われてきた温泉・お風呂の医学研究者である早坂 信哉(はやさか しんや)先生です。

 医師として高齢者医療・地域医療からキャリアをスタートさせ、そこから25年以上専門的に入浴に関する医学的調査を行われてきた、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者といえる方です。

 「世界一受けたい授業」「あさイチ」など各種メディアでもご活躍中で、ご自身の著書には「最高の入浴法」(大和書房)「おうち時間を快適に過ごす入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)などが出版されています。

 ぜひこの記事で普段のお風呂習慣を、いかにこれからのセルフケアとして位置付けていけるかを知っていただければと思います。

この記事でわかること

  • 40〜50代に起きやすい、ホルモンの変化と心身の不調
  • リラックスできる湯温は「40度まで・10分」が目安
  • よく眠るなら、入浴は就寝の90分前に
  • 入浴剤は「医薬部外品」の表記を目安に選ぶ
目次
  1. お風呂の研究は、現場の「疑問」から始まった
  2. 毎日の入浴習慣と、認知症リスクの関係
  3. 40〜50代に起きる、心と体の変化
  4. 更年期と「うまく付き合う」という考え方
  5. 温活のしくみ。血流と自律神経から考える
  6. 眠りのための入浴タイミングと、入浴剤の選び方
  7. 熱いお湯が好きな人は、どうすればいい?
  8. お風呂は、心と体を整える手段

お風呂の研究は、現場の「疑問」から始まった

聞
編集部

まずは早坂先生のご経歴についてお教えください。

インタビューにご回答いただいている早坂先生


早坂先生

はい、私は自治医科大学を1993年に卒業しましたが、この大学は地域医療を専門とする医師の養成を目的とした大学なのです。私自身は宮城県出身なものですから、卒業後は宮城の方に戻り、地域医療のため内科医として働き始めたというのがスタートです。そこではのべ9年ほど勤務をしました。

その地域医療に従事している中で、高齢者の方が大勢いらっしゃり、看護師がお風呂に入れるというシーンで看護師の方々からよく質問をしていただいていました。介助をしながら入浴のお手伝いをするお仕事ですね。例えば、血圧が高い際でも入浴してもよいかどうか、などですね。

その当時は25年前くらいなので、入浴に関する医学的根拠やエビデンスが十分に揃っていなかったのです。判断としては、教科書に書いてある内容で十分かと思えば、そもそも記載がなく、詳細に調べていくと意外にも研究がし尽くされていないことが分かりました。

それがきっかけとなり母校の大学に戻り、安全に入浴いただくにはどういう条件であれば良いのか、など様々な入浴関連の研究をすることになりました。ですので、お風呂が趣味で始めた専門というよりも、実地での体験をもとに必要に迫られて専門的に研究し始めたという背景になります。

聞
編集部

それまでは経験と勘で指示するシーンが医療現場にも多かったものの、やはりしっかりとしたエビデンスやデータを元に判断した方が良いと感じられた、ということですね。


早坂先生

そうです。そこからは、内科医として勤めながら、入浴に関する研究を進めていきました。研究の手法としては、被験者1人1人に研究室で実験をするというようなものではなく、大量のデータを一般住民の方々からいただいて、それを元にして入浴の安全性等を計測するという手法でした。1人1人のミクロな視点では内科医として関わり、大勢のマクロな視点では一般住民の方々からのデータを確認して、というような形で、入浴に関して医学的側面からしっかりアプローチをしてきました。

毎日の入浴習慣と、認知症リスクの関係

聞
編集部

ありがとうございます。ちなみに、これまでのご経験の中で、印象的な事例や研究結果はございますか?


早坂先生

そうですね、最近ですと入浴の事故というよりも、入浴における健康効果を中心に研究しています。特に、毎日入浴習慣のある方とそうでない方とでどのような違いが長期的に生まれるかということにフォーカスしています。入浴習慣のある方々は、認知症になるリスクが低いという研究結果が思いの外強く出てきています。

毎日入浴される高齢者群と、そうでない高齢者群を9年間観測しているところなのですが、前者の方々の方が後者の方々よりも、認知症になられるリスクが26%も少なかったのです。つまり、毎日入浴することで、3割弱の認知症の予防が期待できるということです。

色々な健康法が巷にはあると思いますが、その中でも医学的根拠や証拠がしっかりとあるものというのは必ずしも多くありません。しかし、こちらの研究結果は7,500人の高齢者の方々を9年間追跡した研究結果ですので、きちんとした医学研究になります。

毎日の入浴と認知症リスク

毎日は入浴しない群を100とした場合の比較

高齢者約7,500人を9年間追跡した研究結果より

聞
編集部

毎日の入浴習慣が認知症予防に繋がるというエビデンスになるわけですね。9年間もの間観測を続ける、というのもすごいことですね。


早坂先生

そうですね。高齢化社会が進む日本において、最近認知症に関する関心も高まってきていると思います。そんな中でこのような研究結果が出たことは素晴らしいことだと考えています。

時間軸に関しても、これくらいの長い時間軸の追跡でなければ、「元気だからお風呂に入れるんでしょ」という捉え方をされてしまうのです。ゆえに、元気な方々でも数年後にどのような状態となっているか、までしっかりと追う必要があります。

40〜50代に起きる、心と体の変化

聞
編集部

なるほど。ありがとうございます。では少しテーマを変えまして、弊社では現在40〜50代の方々の体の不調をサポートするようなサービスを作ろうと考えています。そんな中で、40〜50代くらいの方々が直面しやすい心と体の変化に関して、どのようなものがあるのかを早坂先生からお聞きしたいです。


早坂先生

年齢が上がってくると、男性女性問わずホルモンが変化してきます。女性でいうとエストロゲンなどが減ってくる、男性でいえばテストステロンなどが減ってくる、ということです。女性ホルモン、男性ホルモンと呼ばれているものが、一定の年齢に到達するまでは十分にある状態で過ごしてきた中で、それが突然減ってくると。これに伴い、様々な部分でアンバランスな状況が起こってくる、ということだと思います。

特に女性に関してはかなり前から更年期障害として認識されており、冷え性やホットフラッシュ、感情の起伏など、多様な症状が出てくる時期だと言われています。最近では、男性に関する更年期症状の関心が高まってきているように思います。男性ホルモンが減ってくることで、不眠になったりやる気がなくなったりということは十分起こり得ます。

症状としては非常に多彩なので、一概にこうであると述べるのは難しいですが、簡単に言えば男性と女性独自のホルモンが減ってくることによって、様々な部分でバランスが崩れてきて、結果多様な症状が発現してくる、ということです。

更年期に起こる心身の変化

症状の出方には個人差があります

女性

エストロゲンの減少

からだ
手足の冷え/ホットフラッシュ(のぼせ)/眠りが浅い
こころ
感情の起伏/不安感が強くなる/苛立ち

男性

テストステロンの減少

からだ
不眠/疲れが抜けにくい
こころ
やる気が出ない/気分が沈む

更年期と「うまく付き合う」という考え方

聞
編集部

こういった更年期障害と呼ばれる領域の症状を患った方で、それらの症状とうまく付き合っていけている人というのは、どのような生活や捉え方をしているものなのでしょうか?


早坂先生

そうですね、これは人によって症状の深刻度が大きく異なるかと思います。症状が重い方というのは、受診いただき、検査や必要に応じて内服・ホルモン補充などをやらざるを得ないのかなと。症状が軽い方であれば、日々のセルフケアを何か取り入れるだけでもうまく乗り越えられる方もいらっしゃるはずです。

ただ、更年期のこういった症状というのは、ある年齢からプラスマイナス5年、あるいはもっと長い期間体調不良が続くこともあると思います。ここで重要なのが、そういったマイナスの症状を完治させようとすることに気持ちをフォーカスしすぎるのも、今しかない時間という意味では非常にもったいないだろうなという気持ちもあります。どうしても出てきてしまう症状ではあるので、軽度の場合であれば仕方がないという捉え方も重要で、うまく付き合える方法を見つけて、ご自身の人生をより豊かに感じられる時間の使い方をしていく、というのが良いような気がしています。なんとか対抗してやるぞ、という意識ではなく、うまく付き合っていく、という感覚と言いますか。

なんとか対抗してやるぞ、という意識ではなく、うまく付き合っていく、という感覚。
早坂信哉先生

聞
編集部

症状の重さにもよりますが、その状況や症状を悲観しすぎるのではなく、ある程度の割り切りをするのも重要である、ということですね。

弊社では“温活”と呼んでいるのですが、身体を温めることが非常に重要なのではないかと考えています。そんな中で、早坂先生が専門とされている入浴が、こういった更年期における症状にどう寄与するのか、というお考えをぜひお聞かせいただきたいです。


早坂先生

更年期障害とお風呂の関係というのは、必ずしも研究し尽くされているわけではないのですが、昔から温泉に行くと更年期症状が緩和された、というような報告はあったりするわけです。温泉は体を温めるという効果以外にも、そもそも温泉地まで赴くという運動的な効果もあるので、それらをひっくるめての効果だとは思っています。とはいえ、この温活、体を温めるという習慣は、誰しもが試してみるべきセルフケアの一種なのではないかなと思いますね。

そのおかげで全てが解決するということはないと思いますが、やってみる価値はあるだろうなと考えます。

温活のしくみ。血流と自律神経から考える

聞
編集部

そういうことですね。もう少し専門的な観点からお話を深めたいなと思っているのですが、よくテレビなどでは血の巡りを良くしたり、自律神経を整えるなんて紹介されるかと思います。このあたりの、温活における医学的な因果関係みたいなものがあればぜひお教え願いたいです。


早坂先生

女性に関して言えば、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが一定量維持されることで、血流が保たれたり血管が柔らかくなるといった身体的な作用があるのですが、単純にこの女性ホルモンが減ることでそのような作用が小さくなり、結果血流が悪くなったりしてくるということですね。さらにその結果として、冷えの症状が出てきたりするわけです。

また、メンタルへの影響も看過できないものがあります。こういったホルモン量が低下することで、いらつきを覚えたり不安感が増大することがあるのです。

それに対して、温熱作用というのは言葉通り体を温めるということで、この作用として最も評価できるのが血流を良くするというものです。ただ注意点があり、体を高い温度で温めすぎてしまうと、逆に交感神経を刺激しすぎてしまい、苛つきを増大させてしまうということにも繋がりかねません。

これを避けるためにも、リラックスできる温度として通常約40度までの入浴をお勧めしています。40度がぬるいと感じられる場合でも、十分に血流を良くするという作用は担保できます。

エストロゲンの減少から冷えまで

入浴の温熱作用は、流れの真ん中「血流」にはたらきかけます

湯温と自律神経のはたらき

はたらきの強さの模式図

眠りのための入浴タイミングと、入浴剤の選び方

聞
編集部

ありがとうございます。今の内容に紐づいて、その他に日々の入浴・温活のコツや工夫といった内容として適切なものはありますでしょうか?


早坂先生

まず前提として、温活の話には睡眠の話も深く関係しています。更年期障害のうち、よく挙げられる悩みとして不眠もあります。ここに対しても、入浴という行為は非常にプラスに働くと考えています。特に、入浴するタイミングが重要です。

先ほど40度以内が良いという話をしましたが、湯船につかっている時間は10分くらいで良いと思っています。10分だけでも深部体温が0.5度くらいは上昇します。この深部体温の高まりによって血流が良くなるわけですが、就寝の90分前にこのタイミングを作ることが重要であると、たくさんの研究結果が出ています。

グッと深部体温が上がって、下がってくるタイミングがこの90分後なのです。この深部体温が下がるタイミングで眠気がやってくるので、その時に就寝時間をもってくることで良質な睡眠が取れるようになるということです。

入浴から就寝までの90分

深部体温の変化(イメージ)


早坂先生

その他の工夫で言いますと、必須なわけではありませんが、入浴剤を使うというのも良いかと思います。特定の入浴剤には、温熱作用を高めてくれる効果があると証明されており、入浴剤は香りや色をつけるだけではなく、この温熱作用がある入浴剤を選ぶということが重要です。

どの入浴剤にその温熱作用が期待できるかを知る簡単な方法は、医薬部外品の表記があるかどうかをチェックするということです。医薬部外品といっても特別なものではなく、ドラッグストアであればどこでも手に入るかと思います。

今回のケースでは、更年期を迎える女性の方が中心かと思うので、更年期障害に悩んでいる方がいれば、漢方系や生薬系の入浴剤を選ぶのも1つです。市場に出ているものは種類はそこまで多くないかもしれませんが、漢方薬を抽出して濃度を高めた液体の入浴剤や、ティーバッグのようなものに刻んだ生薬を入れたタイプのものなど、いくつかの種類があります。

こういったものには温熱効果はもちろん、そもそも更年期の方向けの漢方として使われる成分が含まれた入浴剤もあります。皮膚から吸収する成分というのはそこまで多くはないかもしれませんが、漢方や生薬の成分が混じった湯気を吸い込むことで、効能を得られるといった具合です。

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聞
編集部

漢方系の入浴剤があるのですね。漢方を飲むとなると少し抵抗感がありますが、入浴剤として取り入れるのであれば確かに良さそうです。


早坂先生

あとは、もっとぬるい温度でゆっくり入浴したいという方には、炭酸系の入浴剤を勧めることもあります。このタイプの入浴剤は、炭酸ガスが血管を広げてくれるので、血流を改善する効果が高いのです。これであれば、ぬるい温度であっても血流を改善する効果が期待できます。

38度くらいのお湯に、20分ほどつかっていただくと。これであれば、長くお風呂を楽しみながらも血流改善ができるというわけです。特に苛立ちが目立つ場合などでは、とてもおすすめの入浴方法です。

熱いお湯が好きな人は、どうすればいい?

聞
編集部

なるほど。ちなみに私は熱いお湯が大好きなのですが、そういう場合はハッカ成分が入った入浴剤などを使って入る、みたいな形でも良いのでしょうか?


早坂先生

原則としては、40度以内の温度で入浴した方が良いかと思います。ただ男性の更年期障害において、やる気の低下を感じられる時は、あえて高い温度で入浴して交感神経をあえて刺激しにいくというのも1つかと思います。

ただし注意していただきたいのが、特に寒い時期などでいきなり熱い湯船につかると、血圧が上がって最悪のケースではヒートショックに見舞われたりする可能性があります。なので、湯船につかる際はまず40度のお湯で入浴を開始し、その後追い焚きで42度くらいまで上げるという手法をとっていただければ、満足度も上がりつつやる気の低下という症状に対する効果も期待できるかなと思います。

あとは、先ほどの話で入浴剤を選ぶのが面倒だと感じられる方は、温泉の名前が入った入浴剤を選んだりするのが手軽かと思います。また、入浴剤のアロマのような香りが苦手だという方もいらっしゃるかとは思います。そういった方には、無臭の入浴剤を使っていただき、洗面器にお湯を張ってもらってそこに檜などの香りのオイルを数滴垂らして入浴するのがおすすめです。それだけでも気分転換になったりもしますし。

目的でえらぶ入浴の温度と時間

いきなり熱いお湯には入らず、40℃から始めましょう

入浴剤のえらび方

湯温の好みと、目的で選ぶ

ぬるめが好き
熱めが好き

血流を上げたい

炭酸系

炭酸ガスが血管を広げてくれます。38℃・20分でも血流改善が期待できます。

温熱タイプ

温熱作用を高めるタイプ。40℃で入り、追い焚きで42℃まで上げて。

気持ちを整えたい

漢方・生薬系

更年期向けの漢方に使われる成分入りも。湯気から香りと成分を。

無臭+香りオイル

香りが苦手な方は無臭タイプ。洗面器のお湯に檜のオイルを数滴。

お風呂は、心と体を整える手段

聞
編集部

詳細にお教えいただきありがとうございます。最後に、読者のみなさまへメッセージをお願いできればと思います。


早坂先生

そうですね、お風呂というのは単に体を綺麗にするための習慣ではないんですよね。最近、若い世代の方々の間では「風呂キャンセル界隈」なんて言葉が生まれています。シャワーだけでいいんではないか、そもそもお風呂に入るのが数日に1回でもいいのではないか、ということですね。

私はそのようなことはないと考えており、お風呂・入浴というのは人の心と体を整えてくれる手段なのです。

もちろんこの領域の研究はまだまだやり尽くされたわけではないものの、今日お話ししたようなことを少しずつ取り入れていってみていただけると、ちょっとした良い変化を感じられたりするのかなと思います。


いかがでしたでしょうか?

 更年期に差し掛かると、本当に様々な症状が出てくることは巷でよく話題となるかと思います。完治させるというのは大変労力がかかることかもしれませんが、「上手に付き合っていく」という心構えだけでもより豊かな人生を築いていけるのかもしれません。

 今回は体を温めるという意味での「温活」をテーマにした記事を作成しました。今後このようなみなさまの役に立てるかもしれないコンテンツも不定期で投稿してまいります。

ぬるめ・無香料で選ぶ入浴剤

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東京都市大学 理工学部 医用工学科 教授/博士(医学)/温泉療法専門医

早坂 信哉

はやさか しんや

1968年生まれ、自治医科大学医学部卒、同大学院修了。浜松医科大学准教授などを経て現職。地域医療の経験から入浴の重要性に気づき28年にわたり7万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「ニュースウオッチ9」「あさイチ」「チコちゃんに叱られる!」「ホンマでっか!TV」など報道番組からバラエティー番組まで幅広くテレビや講演など多方面で活躍中。著書「入浴 それは、世界一簡単な健康習慣」(アスコム)、「医師が教える温泉の教科書」(朝日新聞出版)、「かんたんお風呂ヨガ」(創元社)など。

(編集部)

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